国語コラム「抽象と捨象」(授業内容の復習です)

「抽象」と「捨象」

こんにちは、武井です。

昨日の中3の授業で「抽象」と「捨象」について話をしました。
その授業の復習がてら4か月ぶりの国語コラムとして書いていこうと思います。

読解問題が得意な人と苦手な人

国語(読解問題)が得意な人に「なんでできるの?」と聞くと大抵「普通に読めばわかるじゃん」と答えます。(私も学生時代ずっとこう答えてました。なぜ理解できているのか自分でもよくわかっていませんでした。)

読解問題が得意な人は「普通に読めばわかる」
読解問題が苦手な人は「普通に読んでもわからない」

この差は何でしょうか。
簡単に言ってしまえば「文と文、段落と段落の繋がり」を正確に捉えて読めているかどうかということです。(他にもいろいろありますが、今日はこの話を。)

そしてこのつながりを捉えるために必要なのが、「抽象」と「捨象」です。

今回はこの「抽象」と「捨象」について書いていきます。

抽象と捨象

まずは意味から。

抽象・・・異なる事柄の中から共通項を“抽”出すること
捨象・・・抽象する際に共通しない項を“捨”てること

です。

授業中に挙げた簡単な例を。

「トマト」「バラ」「てんとう虫」この3つの事柄の特徴を挙げていきます。

トマト・・・野菜丸い赤い
バラ・・・赤い棘がある
てんとう虫・・・昆虫小さい赤い

まずは「抽象」
つまり、異なる事柄の中から共通項を抽出します。

そうすると一目瞭然、「赤い」という共通項があることがわかります。
これが抽象化という行為です。

次に「捨象」
抽象する際に共通しない項を“捨”てます。

要するに、上記の3つの事柄で挙げた特徴から「赤い」以外(青字で書いたもの)を捨てるということです。
これが捨象。

この「抽象」と「捨象」がなぜ読解問題の得手不得手に関係するのか。昨日の授業と同じ説明をします。

そもそも論説文とは何か

論説文とは、簡単に言うと「筆者が切実に伝えたい一つの社会的なテーマ」について説得力を持たせるためにいろいろな角度から主張している文章のことです。(わかりづらっ)

立川高校過去問

昨日の授業で扱った立川高校の論説文で説明します。

その文章の1・2段落目にはこんなことが書かれています。(内容はかなり噛み砕いて意訳しています。)

①②
「自明性の罠からの解法」のためにはそこから一旦離れて全体を捉えなおさなければならない。

自明性とは「当たり前」だと思っていること・思い込んでいることという意味。
そして筆者はその「自明性」から解放されなければならないと主張しています。
そのためには、一度そこから離れて、離れたところから全体を捉えなおしなさいと主張しています。

そしてその次の段落にはこんなことが書かれています。

仕事でインドに滞在したときのこと。
目的地に向かうために朝早くから電車を待っていたが、1時間到着が遅れるというアナウンスが入った。「マジかよ」と思う筆者。
そして1時間後、また1時間遅れるというアナウンスが入った。「おいおい」と思う筆者。
さらに1時間後、また1時間遅れるという話が入った。「はぁぁぁ?」と思う筆者。
最終的に電車は来なかった。途方に暮れる筆者。

次の段落

日本には3K(きつい、きたない、きけん)という言葉があり、3Kは嫌なものとして認識されている。
しかし、ここインドではそんな3Kばかりなのにも関わらず、なぜか「そこがいい」と魅力を感じてしまう。「なんでだろう」と思う筆者。
これは矛盾である。

次の段落

を書く前に。
例えば、ここで「次の段落に、文章の流れに合うように自分の体験談を書いてみましょう。」という問題が出された場合、書くべきことをすぐに思いつくでしょうか?
(ちなみにこれ、この年の立川の作文の問題と同じような問題です。)

読解問題ができる人はこれが簡単にできます。(あとこのブログを読んだ人は簡単にできますね。)
なぜなら、読解問題が得意な人は、抽象と捨象ができるし、このブログを読んだ人は、私の説明がうますぎて抽象と捨象をもう完璧に理解しているから。

続き

インドの市場ではたった数十円数百円の値切りをめぐって何時間も交渉している人がいる。
そして何時間も費やした末に、結局交渉が折り合わずに買わないで帰ってしまう場合もままある。「マジかよ」と思う筆者。
彼らには「時間を無駄にしている」という感覚がないのだろう。

以後、筆者の体験談が続き、最後の段落でまた「自明性の罠からの解法」「よりよい社会を再構するために一旦離れて全体を見渡そう!」という話が出てきて終わります。

さて、読解問題が苦手な人がこの文章を読むとどんな印象を抱くかというと「筆者の驚きインド体験記」のようなものになるでしょう。
インドでの話と最初と最後の段落の内容に繋がりを感じていない人はこのような印象になるでしょう。

論説文とは何か、もう一度確認します。
それは、「筆者が切実に伝えたい一つの社会的なテーマ」について説得力を持たせるためにいろいろな角度から主張している文章のことです。

上記の文章もまた、正真正銘の論説文です。インド体験記なんかではありません。
つまり、この文章にも「筆者が切実に伝えたい一つの社会的なテーマ」が書かれているわけです。

解説していきます。
抽象と捨象をします。

③インドで電車が遅れること
④3Kは魅力的なもの
⑤数十円のために何時間もかけても無駄だと思わない考え方

この3つの共通項はなんでしょうか。
それは、「日本ではそんなことあり得ない」ということです。

つまり、日本で当たり前だと思っていたことは本当は「当たり前ではない」ではないのではないかということ
インドに来た(日本を一旦離れた)ことによって日本を顧みた(日本全体を捉えなおした)結果、当たり前だと思っていたことが実は当たり前ではないことに気が付いた(自明性の罠からの解法)。

③④⑤の段落は、①②段落と最後の段落で述べた「自明性の罠からの解法」についての話をしている、つまり③④⑤と①②は密接に繋がっているということです。(③④⑤の体験談から、「自明性の罠からの解法」を抽象し、電車・3K・値切りを捨象しながら読むべき文章であったということ。)

「抽象」と「捨象」ができないと文章が読めないということはこういうことです。

この文章ではすべての体験談が「自明性の罠からの解法(当たり前だと思い込んでいるものは本当は当たり前ではないのではないかと考えること)」という一つの命題に収斂していきます。
読解問題が得意な人は、自然と抽象と捨象を行いながら読むことで、各文や各段落を必ずその文章全体に一貫している“命題”に結びつけて読んでいます。そして、論説文がそういう構造になっていることを経験的に知っています。ここが大きな差です。読書経験によって差が出るのは火を見るよりも明らかです。小さいころから読書をしていればこんなことは誰に教えてもらうわけでもなく簡単にできます。

読解問題が苦手な人はまずは、論説文がこのような構造になっていることを理解しなければなりません。
そしてこのように構造的に解説されないと、理解できなかった文章を理解することはできません。もちろん、読めるようにもなりません。

また、これは何も国語だけに影響する能力ではありません。他の科目(特に理系科目)にも「抽象と捨象」という行為は付き物です。当たり前ですが、頭が良い人(勉強ができるだけでは頭が良いとは言えない)は皆これができます。
読書は間違いなく「頭の良さ」に寄与します。塾に通うより安上がりだし効果があります。
「頭が良くなりたい」のであれば本を読んだほうが良い。

脱線しました。

さて、⑤の段落の前に出した「次の段落に、文章の流れに合うような自分の体験談を書いてみましょう。という問題に対して「いやいや、私インドなんか行ったことないし体験談なんか書けないよ~」「ラッキー、俺はインドに行ったことがあるからその体験を書くぞー」と思った人は抽象と捨象ができていません。

この文章においてインドなんかどうでもいいわけです。メキシコでもケニアでも北海道でも何でもいい。なぜならそこは捨象される部分だから。書かなければならないことは「自明性の罠から解法」された体験であることだから。
因みに、昨日の授業での中3の女の子はこの作文問題では「海外旅行に行った時に、日本では人間が行っているイミグレーションをその国では機械がやっているということに驚き、日本を離れてみることで新たな可能性を感じることができた。」という素晴らしい内容の作文を書いて持ってきました。すげー。

もう少し色々書こうと思いましたが長くなってしまった疲れたので終わります。(文章にすると1時間もかかりました。本文がない状態で解説するのは難しいですね。実際に話したほうが手っ取り早い。できることなら、保護者の方向けに国語とか算数の解説会などをしてみたいな~と先生たちで話したことがありますが、どうでしょうかね。)

文章構造の詳しい話は授業内でしましたね。あとは文章を何度も読んで復習しておくように。
(実際にこの読みたい方は、立川高校の平成19年度の過去問の論説文を読んでみてください。言ってくれればプリントでお渡ししますので読んでみてください。)

それではまた、4か月後に。

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